Rotary evaporator · 冷却 −4 ℃ 前提
エバポレーションの適正圧力は?
溶媒と湯浴温度を選ぶと、何 hPa まで下げられるかが出ます。Δ20 は目安にすぎません。表面張力(=突沸のしやすさ)と粘度(=泡立ち)で溶媒ごとに補正し、Büchi の推奨より安全側に振っています。
この計算は、次の2つを前提にしています。どちらかを外すと、圧力が正しくても突沸します。
- ナスフラスコを使う。直胴のバイアルや平底容器は、回転させても薄膜ができません(壁が回転軸と平行なので液が這い上がらない)。細い首は蒸気の逃げ場を絞るため、沸いた瞬間に液が押し上げられて接続部へ飛びます。減圧に対して構造的にも弱く、破損の危険があります。
- 液量は容器の 1/3 以下。半分入れると薄膜ができず、バルクの液が過熱されます(50 mL なら 15 mL 程度まで)。
減圧の手順
各段で泡立ちが落ち着き、蛇管の濡れが安定してから次へ。突沸は定常状態ではなく、液温が高いまま一気に引いたときに起きます。
圧力 (hPa) — 対数目盛
遅すぎ
適正
速いが要監視
突沸域
なぜ Δ20 では足りないのか
突沸は「核生成の遅れ」で起きる:泡ができるには、液が沸点より少し高い温度(過熱度)になって初めて核が立ちます。必要な過熱度は表面張力に比例します。水は γ = 73 mN/m と有機溶媒の 3 倍近く、泡がなかなか立たない → 液温だけが上がる → 一気に沸く、という挙動になります。だから水の Δ は 20 ではなく 8 程度に抑えるべきで、Büchi の表の値(水:湯浴 50 ℃ で 42 hPa)はかなり攻めた設定です。γ が 20 前後のヘキサンやエーテルは、逆にどこでもすぐ核が立つので滑らかに沸きます。
泡立ちは粘度で決まる:泡が液面で破れずに積み上がるのが foaming です。粘度が高いほど液膜の排水が遅く、泡が残ります。DMSO・NMP・ブタノール類・IPA は 2 mPa·s 前後あり、突沸しなくても泡が上がって蛇管に届きます。濃縮末期は溶質が濃くなって粘度がさらに上がるので、最後だけ泡が立つのはこれが原因です。
蒸発熱は速さを決める:同じ熱量でも、蒸発熱が小さい溶媒(DCM 359 J/g)は水(2380 J/g)の 7 倍の量が飛びます。水が遅いのは Δ が足りないからではなく、蒸発熱が大きいからです。ここで圧力を下げて Δ を稼ごうとすると、突沸側に踏み込みます。水は湯浴を上げるほうが正解です。
この計算の補正:γ < 30 → Δ15、30〜40 → Δ12、40 以上 → Δ8。さらに η ≥ 2 で Δ を 12 に、η ≥ 3.5 で 10 に制限。危険側の限界は γ < 30 → Δ30、30〜40 → Δ22、40 以上 → Δ15。Büchi の Δ20 より安全側に振ってあります。遅いと感じたら、圧力を下げるより先に湯浴を 5 ℃ 上げてください。同じ Δ でも蒸気圧は指数関数的に増えるので、そのほうが速く、かつ安全です。物性から組んだ経験則で、検証された相関式ではありません。
溶媒一覧(クリックで切替)
他のツール
同じ考え方で作った有機合成用のツールです。どれも単一 HTML・インストール不要です。
- NMR 不純物ピーク検索
シフト値から不純物を特定する。化合物名から逆に引くこともできる。重溶媒 13 種対応。
- フラッシュカラム条件表
TLC の Rf と粗生成物量から、カラムの内径・シリカ量・溶媒量・流速を出す。流した結果を記録できる。
- FTIR 帰属・予測ツール
波数から官能基を引く。構造から吸収を予測する。配位シフトを読む。ATR と KBr の差を補正する。
くらげ日和のショップ(BOOTH)→
出典
- BÜCHI Labortechnik AG「List of Solvents」(湯浴 30 ℃ で沸騰する圧力の実測値)
- 上記と常圧沸点の 2 点を Clausius–Clapeyron 式でフィットし、任意の湯浴温度における圧力を内挿。蒸発熱は同フィットの傾きと分子量から算出。
- 表面張力・粘度は 20–25 ℃ における一般的な文献値。
免責
水について:本ツールの推奨圧力どおりに減圧して突沸した実例があります(50 mL の直胴バイアルに半分ほど水を入れ、湯浴 50 ℃。液が接続部まで吸い上げられました)。表示している圧力は狙う目標値であって、安全が保証された下限ではありません。まず容器と液量を確認してください。エバポは回転で作った薄膜から蒸発させる装置なので、直胴バイアル・平底容器を使った場合や、液量が容器の 1/3 を超える場合は薄膜ができず、圧力を正しく選んでもバルクの液が過熱して突沸します。加えて水は表面張力が高く泡の核が立ちにくいため、計算上の適正域でも一気に沸くことがあります。水の留去はナスフラスコで、圧力を攻めず、湯浴温度で稼いでください。
本ツールが表示する数値は、上記の出典および一般的な経験則に基づく参考値です。正確性・完全性・特定の目的への適合性を保証するものではありません。
実験を行う際は必ず一次文献と SDS を確認し、所属機関の安全規則に従ってください。最終的な判断と、その結果生じる一切の責任は利用者に帰属します。本ツールの使用に起因する損害について、作者は責任を負いません。
本ツールは作者が個人で作成したものであり、所属機関の公式な成果物ではありません。
入力したデータはブラウザ内でのみ処理され、外部サーバーに送信されることはありません。外部リソースを一切読み込まない設計のため、ネットワークから切り離した端末でもそのまま動作します。
© 2026 くらげ日和 All rights reserved.